2009年4月13日月曜日

もし、がんになったら


健康コラム、「ホリスティックヘルスを目指して」の第5回目の原稿を公開いたします。

なお、今週土曜日(4月18日)に、慈恵クリニックの「コアの会学習会」で、「がんを生きる」というテーマでお話をさせていただきます。その予稿と思っていただいて結構ですが、学習会ではもう少し深い話をさせていただこうと思います。ご期待下さい。

「コアの会学習会」については、ホロスの風の3月23日の山田先生の案内をご参照ください。


Ⅴ:もし、がんになったら

働き盛りの方が、今最も気になる病気と言えば、やはり「がん」ではないでしょうか。二人に一人はがんになり、三人に一人はがんで死ぬという時代になってきました。ですから、がんはごくありふれた病気なのですが、がんの研究は進歩しつつあるにもかかわらず、わからないことがいっぱいあります。

もし、がんと宣告された時には、その病状に対して、正しい知識を持つことが必要です。一口にがんと言っても、たいへん多くの種類があり、そのできている場所、性質、進展度合いによって、治療の方針は全く変わってきます。また、同じ場所、同じ種類のがんであっても、その後の経過が人によって全く違うこともよくあります。また最近は、がんの診断と治療にも次々と新しい技術や薬も登場しています。

一方で、がんの代替療法もいろんなものがあります。特に現代医学ではもう手の施しようがないと宣告されてしまった、いわゆる「がん難民」の方にとっては、代替療法に頼るしかないというのも実情です。情報を集め、代替療法を実践されている方も多いと思われます。
前回にも書きましたように、その効果や価値は一概には言えません。「現代医学の考え方にそぐわない」、「有効性の証拠がない」、と頭から否定するのも問題ですが、逆に手術などのきちんとした治療をすれば治る可能性が高いのに、それが嫌さに中途半端な代替医療に走って、治療のチャンスを逃してしまうというのも残念なことです。代替医療をやるからには、信頼できるものを、信念を持ってきちっとすることが必要です。

そんな中でベストの治療法を選ぶためには、医療者とのコミュニケーションが必要です。がんは、医療者と患者が共同して立ち向かってゆかなければ、うまく対処できない病気だからです。私は、がんに対する理想の治療は、(今の医療のシステムの中では困難なのですが)現代医学の良さも、代替医療の良さも活かし、患者さん一人一人の特性や希望に応じた、オーダーメイド、テーラーメイドの治療ではないかと考えています。


今、多くの人が持っている、一般的な「がん」のイメージは、次のようなものではないでしょうか。原因不明。確実に予防できない。どんどん大きくなる。不治の病・死の病。一旦病巣が消えても、再発や転移をする。早期発見・早期治療が全て。手術・放射線・化学療法(抗がん剤)は、こわい、副作用の多い、危険な治療法。三大療法で効かなければもう手の施しようがない・・・

つまり、がんはとても恐ろしいもの、悪いもの、排除すべきもの、憎い敵、と考えられています。しかし、ホリスティック医学の立場から見ると、がんは少し違った見方ができます。

多くの場合、がんは、放っておくと命にかかわる重大な病気であることは確かです。そのため、一旦がんになると、どんどん進行する一方であり、自然治癒することはありえないと思われていますが、実はそうでもありません。

私たちの体は、常に細胞が入れ替わってゆくことにより維持されていますが、その中では、異常な細胞、がん細胞は、いつも少しは発生していると言われています。ただそのような細胞は、ふつうは体の持っている免疫システムにより排除されてしまいます。しかし、このような免疫による防衛機構をすり抜けて増えてきたのが、目に見える形のがんなのです。

ですから、免疫力がいろんな理由で低下すると、がんが発生する可能性が高くなり、逆に免疫力、自然治癒力がアップするとがん細胞は消えてゆきます。そして、ごくごく極めて稀ですが、進行したがんでも確かに自然治癒したという例があるのも事実です。それでは、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

以前にも書きましたが、心と体というのは非常に密接な関係にあります。心の影響で体に病気ができる場合はいくらでもあります。実は、がんもそうだといわれています。心が生き生きとしており、よく笑っていると、がんの進行がおそくなる。逆に生きている目標がなくなり、絶望してしまうと、がんの進行が速くなるということがよくあります。
最近は、心の状態が免疫力に影響を与えることがわかってきました。イライラ、抑うつといった心の状態は、がんを排除するための免疫力が低下するといわれており、逆に吉本新喜劇を観た後では、免疫力のマーカーのひとつであるNK細胞活性が上がった人が多いという研究報告もあります。
ですから、心の在りかたで進行したがんが自然に治癒するということも、絶対にありえないことではないのです。

 このような、極めてまれな自然治癒を体験された方、そこまでゆかないまでも、大手術など大変な体験をして、がんから生還してきた方々には、「その後の人生が大きく変わった」と言われる方が多いようです。意外ですが、がんを体験し、がんから生還した人々の話を聞くと、必ずしもがんを「悪いこと」と思っておられないこともあります。がんになったことは必ずしも敗北ではなく、人生を見つめなおすためのチャンスであることも確かです。がんは、生きがいとか、本当に大切なものとか、死に対する考え方とか、そんなことを考えさせてくれる先生なのかもしれません。

最後に、私の提唱する「がん」になった時のアドバイス「がんを生きる十二カ条」を記します。
1.あきらめない
2.がんばらない
3.自分のがんを知ろう
4.自分の病気は自分で治そう
5.助けてもらおう
6.笑おう・泣こう
7.つながりを持とう
8.死に方を考えよう
9.がんの意味を考えよう
10.人生を肯定しよう
11.勇気・祈り・希望
12.生き方を変える

愛場庸雅