2009年5月4日月曜日

物事を極めるとは

先日、喫茶店のマスターのお話を伺う機会があった。
と言っても、実際の話は聴けず、少し雑談をした程度であったが。

その中でとても印象に残ったことがあった。
コーヒーを30年以上も入れ続けていれば、その道のプロである。
当然、知識や技術も豊富である。
よい材料を使い、それぞれのコーヒーの持ち味を最大限に引きだす。

これが物事を極めることだと思いきや、それが違っていた。
彼は、コーヒーはあくまでもお客さんと楽しいコミュニケーションをとるための
ひとつの道具に過ぎない、とのことだった。
目的はコーヒーではなく、人に楽しんでもらうことであり、
そのための一つの手段に、彼はコーヒーを使っているというのだ。

だから、敢えてコーヒーでなくてもよいのだという。
コーヒーを極めると、コーヒーがいらなくなると言うわけだ。
これぞ物事を極めた人の言葉ではないだろうか、と思った。

私などはまだまだ知識や技術に頼っているところが多い。
もちろんそれは重要であるし、それなくしては単なる素人だ。

しかしそれを超えると、知識や技術ではない、その人の存在自身が
人を癒すようになるのかもしれないと思った。

どの世界でもそうだが、物事を極めると、
物の世界ではなく、存在やエネルギーの世界になるのかもしれないなあと、
そんなことを思いながら、マスターの話を聞いていた。