2010年7月22日木曜日

復活、犬の骨折


「もう、だめかもしれない。天に任せるしかない。」
そう思った。

7月15日、出がけにまた犬の足が腫れているのに気付いた。骨折を金属プレートでつないだ傷の感染で、もう何度繰り返したかわからない。いつもの膿の出口はまだ閉じている。でも、対応は早い方が良いので、針でつついて液を出す。
まだ、膿ではない。いつもと少し違う。
化膿しきっていないのだ。

「これから、まだ悪くなるかも」直観的にそう思う。
普通は、化膿して膿がひどいと激しい炎症と思いがちだが、化膿しているということは、実は体の自然治癒力である白血球が働いている証拠で、本当は悪いことではない。
むしろ化膿する前のほうが、治癒力が弱っていて病勢が進行している時なのだ。

午後、携帯電話の留守電に悲痛な声が入る。
「蘭ちゃんの・・・様子がおかしいので・・・獣医さんに・・・行きます・・・」
直ちに、大雨の中、箕面の永田動物病院へ。
(こんど11月のフォーラムで講演して頂く先生です)
例によって、傷を洗浄して処置し、帰宅。
だが、いつもと違う。
元気がない。反応がない。ぐたっとしている。

翌日の夕方も再び動物病院へ。
熱が高い。考えてみれば、オシッコがずっと出ていない。(歩けないのでオムツをしているから、かえって尿量がよくわかる)
脱水か? 敗血症を起こしている可能性が高い。 腎不全か?
18Gの太い針を、皮下に刺して、300ccほど点滴をして帰宅。

夜中は、か細い息でひたすら寝ている。
水分を取らせるために、注射器で水を口元に垂らしてやるとかろうじて飲む。
17日からの出張予定をキャンセルし、動物病院へ通う。
回復のきざしはない。
梅雨明けで炎天下の18日も車で犬を運ぶ。
暑すぎる。かえって脱水がひどくなる。体温40度。

4日間わずかの水とジュースくらいしかとっていない。食物は受け付けない。
目に力がない。
夜中にのぞいて。「ああ呼吸してる」と安心する状態が何日も続いている。

かぼそい呼吸をじっと見ていると、14年間の楽しかった思い出が甦って、涙が出てくる。
いつかは、来ることだ。
悔いは残すまい、と注射器で水を口元に垂らす。

19日は獣医さんは休診日。体温を上げないよう、エアコンをつけっぱなしですごす。
水を垂らすと飲む。
特性の玄米+ニンジン+リンゴのスープを垂らす。
少しずつ飲む。が、あとはひたすら寝ている。

そして夕方。
顔を上げた。
ためしに、ベビーボーロをあげてみると、がつがつと食べ始めた!!
もうちょっと! と、やわらかいドッグフードをやるとこれも食べる。玄米粥も食べる。
力が戻ってきた。

あきらめてはいけない。そう思う。
何故かわからない。何が効いたのかはわからない。
言えるのは、自然治癒力がまだあったということだけである。

この話が人間だとどうなるのだろう?
「気力で死線を乗り越えた」とか、「介護者の愛の力が勝った」とか、そんな評価になるのだろうか?

犬に「何が何でも生きてゆこうとする気力があった」とは思いにくい。
飼い主としては、「精いっぱいやった」という思いはあるが、「愛の力で命を救った」などと思い上がる気もない。
心の力は確かにあるのかもしれないが、それがどこまで影響したのかはわからない。

いのちの力に感謝し、甦ったことを素直に喜びたい。

愛場庸雅